「サメ」というとどんなイメージが浮かぶでしょうか?多くの方は「ジンベエザメ」や「ホホジロザメ」など、大きな体で海を豪快に泳ぎ回る姿を浮かべるのでは無いでしょうか。
しかし、時々「サメが川で泳いでいる」というニュースが報道されることがあります。河川は、塩分量の違いにより海とは大きく環境が違いますが、サメが川にいるなんてことは、あり得るのでしょうか?
結論から言ってしまうと、あり得ます。サメの中には淡水でも生活できる種類がいるんです。今回は、そんな淡水に適応したサメについて紹介します。
サメのほとんどは海に住んでいる
現在、科学的に有効とされているサメは、世界で500種類以上います。「ジンベエザメ」や「ホホジロザメ」は、その中でも非常に有名な種類です。
しかし、これだけ種類がいるサメ達ですが、基本的に彼らは塩分が含まれている「海の水」に適応した「海水魚」です。そのため、塩分の含まれない「川や池の水」つまり淡水には住むことが出来ません。
簡単に言うと、サメは「淡水魚」では無く、体内の塩分を調節する浸透圧調節機能が、淡水で生活する用には出来ていないのです。
しかし、特に沖縄の河川で、サメの目撃情報は複数あります。なぜ川にサメがいるのでしょうか?
「オオメジロザメ」は淡水にも住める?
サメの多くは淡水に住むことは出来ません。しかし、限られた種類のサメでは、淡水で泳ぐ姿が確認されています。それはオーストラリアや東南アジアに生息するGlyphis属の数種と、日本にも生息している大型のサメ「オオメジロザメ」です。
沖縄の河川で目撃されているサメは、この「オオメジロザメ」です。オオメジロザメはサメ類の中で数少ない、淡水域に侵入してもある程度対応ができる種類なんです。
オオメジロザメはサメの中でも比較的大型(最大4m程度)の種類で、世界のサメ被害件数は第3位と、危険性の高いサメであることが分かります。サメが好んで人間を食べるわけでは無いですが、比較的危ない種類であると言えますね。
そんなオオメジロザメですが、普段は海で生活をしています。他のサメと比べると浸透圧を調整する機能が優れていることは明らかとなっていますが、一方でオオメジロザメが海水から淡水に移動して、その環境に適応することは、そんなに簡単なことでは無いとされています。
それではなぜ、オオメジロザメはわざわざ淡水に移動していくのでしょうか?
オオメジロザメはなぜ淡水に行くのか
オオメジロザメが淡水域に移動する理由は、はっきりとは分かっていませんが、いくつか考えられる理由があります。
- 淡水域に移動することで、食べ物を独占するため
- 淡水域はオオメジロザメにとっての捕食者が少なく、安全であるため
一つは「淡水域にある食べ物を独占するため」です。河川で見つかったオオメジロザメの胃内容物を調査したところ、河川内に生息するカニや魚類をたくさん食べていることが分かっています。
沖縄の海といえば非常に綺麗、つまり栄養素や食べ物はそこまで豊富ではありません。そのため、栄養が豊富な河川に移動することで、食べ物を独占していると考えられます。
もう一つは「淡水域が安全であるため」です。河川で発見されるオオメジロザメの体長は1m程度ですが、オオメジロザメは最大で4m近くまで成長する種類です。
海にずっといると、成長段階のまだ初期の段階では、他の大型魚類に捕食される可能性が高いですが、河川に移動すれば敵は少なくなり、安全に成長することが出来ます。
サメの仲間であるエイには淡水種もいる
サメの多くは淡水に適応出来ませんが、同じ軟骨魚類でサメの仲間である「エイ」には、淡水適応できる種類がいくつかいます。
たとえばこんな感じです。彼らは海水でも淡水でも生活することが出来ます。中でもノコギリエイは、サメでは報告の無い淡水での出産も確認されており、サメとは適応能力が異なると考えられます。
- アカエイ
- ノコギリエイ
- アトランティックスティングレイ など
また、一部のエイについては完全に淡水に適応しており、逆に海水では生活することが出来ません。
- アマゾンタンスイエイ
- ポルカドット・スティングレイ
- マユゲエイ など
アマゾンタンスイエイの仲間は、形のバリエーションに富んでいることから観賞魚としての人気も高い種類です。興味がある方は飼育してみても面白いかもしれませんね!
まとめ:サメは川でも生きれらる
今回は川で生きられるサメについて解説してきました。サメのほとんどは海水を好み、海で生活をしていますが、一部の種類には淡水に適応できる種類もいます。
日本の川で見つかるサメは「オオメジロザメ」です。なぜ淡水に移動してくるのか、はっきりとした理由は明らかになっていませんが、食べ物の独占や安全性確保が、可能性としては高そうです。
今後更なる研究結果が出ることを待ちましょう!
参考資料
- 佐藤圭一,富田武照『寝てもサメても 深層サメ学』勉誠出版、2021年