【豆知識】サケはなぜ川から海に出る?なぜ故郷の川に戻ってくる?

海産物の中でも特に人気のある「サケ」、私たちの食卓に欠かせない魚ですが、彼らの生態には「普通の魚とはちょっと違う部分」があります。

それは海と川、つまり「海水」と「淡水(川や湖)」を行き来するという点です。

塩分濃度が異なるエリアをわざわざ移動する、という危険を冒してまで、彼らが海と川を行き来する理由はなんなのでしょうか?詳しく解説していきます。

目次

川と海を移動するのは普通じゃない?

そもそもの話になりますが、魚が海と川を移動するのは普通ではありません。

なぜなら、海と川は「海水と淡水」でそれぞれ塩分の濃度が異なっていて、別々の塩分調整機能が必要になるからです。

基本的に海に住む魚は川では生きられませんし、川に住む魚も海で生活することはできません。

例えば、イソギンチャクとの共生で知られる可愛らしい魚「カクレクマノミ」は海水魚なので、淡水に入れると対応出来ずに死んでしまいます。

にもかかわらず、サケはわざわざ海と川を移動するわけです。なぜそんなことをするのでしょうか?

↓サケが海と川の両方で生きられる理由はこちらで解説しています。

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サケが海と川を行き来する理由とは?

サケの一生を振り返ると、下記のようなサイクルとなっています。

サケの一生のサイクル
  • 川で孵化
  • 海に出て、2〜6年ほどかけて成長
  • 自身が生まれた故郷の川に戻る

つまり、移動の流れとしては「川→海→川」ということです。ということでまずは、「川→海」の移動についてまずは見ていきましょう。

故郷の川に戻る習性は「母川回帰」と呼ばれています。

サケはなぜ川から海に出るのか?

なぜ淡水魚であるサケが、わざわざ海に移動する必要があるのでしょうか?

これは、「成長に必要な栄養を蓄えるため」です。

サケは川の中でも特に上流を産卵場所としており、産卵する時期は秋〜冬が一般的です。川の上流や秋〜冬という季節は、栄養豊富な食べ物が少ないため、産まれたサケがその場で大きく成長することは難しいです。

そのため、サケは孵化後にプランクトンや他の小さな魚など、豊富な栄養素を求めて、大海原に旅立っていきます。

サケはなぜ故郷の川に戻ってくるのか?

成長するために海に移動したサケは、産卵の時期になると、故郷の川に戻ってきます。なぜ一度海栄養豊富な海に移動したにもかかわらず、産まれた川に帰ってくるのでしょうか。

これは、「海よりも川の方が産卵するのに安全だから」です。

淡水魚であるサケが産む卵は、比重的に海の中で浮いてしまいます。

卵が浮いてしまうと他の魚に捕食される確率が上がりますが、サケが産む卵の数はあまり多く無い(約3,000個)ので、海で産卵するとほとんど生き残ることができないと言われています。

また、川は海と比べて荒れることが少なく、外敵も多くありません。

そして、サケは産卵するにあたって、流れが速い・水深が浅いといった外敵に攻撃される可能性の低い場所を産卵所に選ぶ傾向にあります。

子孫繁栄の確率を高めるために、わざわざ一同出た海から川に移動してくる、というわけです。

産まれた川に戻れる確率は1%以下?

孵化して川に出ていったサケが、自分が産まれた川に戻ってこれる確率は1%以下とされています

仮に確率を1%とすると、1000匹サケが産まれた場合に戻って来れるのは約10匹程度です。

外敵に襲われたり、病気になったり、食べ物を取れなかったり、人間に捕まったり…こういった試練を乗り越えられるサケはほとんどいないということです。

海に出るという生存戦略が上手くいっているからこそ、ここまでサケは多く生き残っていると言えますが、それでも自然の中で生き残るというのは非常に過酷なことです…。

サケの稚魚を放流した時に川に帰ってくる確率、つまり「回帰率」は日本全体で4%を超える年もあります。稚魚の放流による資源増加には効果があるようですね!

サケは川に戻って来ても、すぐ死んでしまう?

また、1%以下という高い倍率をくぐり抜けたサケ達も、故郷の川で産卵を終えると死んでしまうものがほとんどです。

これは、産卵によって蓄えたエネルギーを使い果たしてしまうからです。サケは川を上り始めた段階から何も食べなくなり、海で蓄えたエネルギーを頼りに泳ぎ続けます。

そのため、産卵場所まで到着したサケの体は既にボロボロの状態です。そんな状態で子孫を残すために産卵を行うので、サケは産卵直後に死に至ってしまう、というわけです。これは卵を産むメスだけではなく、放精するオスも同じです。

その後、死んだサケは死骸となることでプランクトンに分解され、川の栄養素となって自分たちの子孫成長の手助けとなります。

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「アトランティックサーモン」や「ヤマメ」など、全てのサケが産卵後に死んでしまうわけではありません

サケ好きにオススメの水族館

日本には多種多様な水族館が存在しており、その中にはサケをメインに扱ったものも多く存在します。中でもオススメの施設を紹介します。

サケ好きにオススメ水族館

どこもサケ好きにはたまらない施設となっているので、サケについて勉強したい人もサケを食べたい人・観たい人など、サケに興味がある人にオススメです!

サケが遡上してくるということで北海道の施設が多いですが、ぜひ行ってみてください。

まとめ

今回は「サケがわざわざ海や川を移動する理由」を紹介してきました!今回の内容をまとめるとこんな感じです。

今回のまとめ
  • サケは川で孵化したら海へ移動し、成長期した後に故郷の川に戻る
  • サケが海に移動する理由は、豊富な栄養素を蓄えるため
  • サケが川へ戻る理由は、海よりも川の方が産卵に安全なため
  • 孵化して海に出たサケが故郷の川に戻れる確率は1%以下
  • サケの多くは川に戻って来れても、産卵後死んでしまう

参考資料

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この記事を書いた人

水族館や深海魚・水産に関わることなどが大好きです。
大学院で深海魚に関する研究をしていましたが、2020年に社会人になり
働きながらブログをちょこちょこと書いています。

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