皆さん突然ですが「マンボウ最弱説」について聞いたことありますか?
Twitterなどで一時期流行ったこともありました。その中身は大体こんな感じです。
- まっすぐしか泳げず、岩にぶつかって死ぬ
- 皮膚が弱すぎて触ると痕が付き、それが原因で死ぬ
- 潜ったら水が冷たすぎて死ぬ
- 朝日が強すぎて死ぬ
- 水面で日にあたっていたら鳥につつかれ死ぬ
- 寝ていたら陸に打ち上げられて死ぬ
- 寄生虫を殺すためにジャンプして着地の際に死ぬ
- 食べた魚の骨が喉に詰まって死ぬ
- 食べたエビやカニの殻が内蔵に刺さって死ぬ
- 水中の泡が目に入ったストレスで死ぬ
- 海水の塩分が肌に染みたショックで死ぬ
- 前のウミガメとぶつかる予感がしたストレスで死ぬ
- 近くに居た仲間が死亡したショックで死ぬ
- さらにそのショックで死ぬ
これが本当なら、マンボウはまさに最弱の生物です。これほど弱い生き物は他にいないはず…。
結論から言ってしまうと、夢を壊す(?)ようですがこの噂は嘘です…。多くの水族館関係者や研究者から、既に否定されています。
しかし、マンボウがデリケートな生き物なのは本当です。というわけでマンボウの真実について、詳しく解説していきたいと思います。
マンボウについてもっと知りたい!という人はこちらの書籍「マンボウのひみつ」がオススメです。中・高校生向けとなっていますが、内容は結構専門的で、これを読むだけでマンボウ博士に近づきます。
マンボウのリアル①「泳ぐのが下手」
マンボウは魚なのに泳ぐのが下手です。体のつくり上、ヒレ以外を曲げることができないため、小回りを効かせた急転回などができません。
みなさんが水族館に行った時、マンボウがいる水槽を見てみると何か気づくことがあると思います。
・マンボウのいる水槽は殺風景な気がする…
・この水槽だけビニールが貼ってあるように見える…
この理由はいくつかありますが、その一つはマンボウの泳ぎが下手なためです。マンボウは水槽の中を泳いでいても上手く曲がることが出来ずに、壁や床にぶつかってしまいます。
そのため多くの水族館では、壁やアクリルガラスにぶつからないようビニールシートで覆って保護したり、出来るだけシンプルな水槽にしたりしています。
それでも壁(ビニール)にぶつかっているマンボウがとても多いのが現状です。このため、水族館にいるマンボウは唇が擦れて、たらこ唇のようになっているものが多いです。
マンボウのリアル②「目がそこまで悪くない」
水族館に行くと、マンボウがせっかく用意したビニールシートに直撃し、一心不乱に泳いでいる姿を目撃することがあります。そのため、マンボウは泳ぎが下手なだけでなく、目が悪いのではないか、と言われることがあります。
しかし、マンボウの視力が他の魚と比較して突出して悪い、ということはありません。一般的な魚の視力は人間で言う0.1〜0.2ぐらいとされており、大人のマンボウもそれぐらいの視力があると考えられています。
つまり、壁があることはマンボウにも分かるはずです。それでもビニールシートに向かって泳いで行くマンボウ、なぜそうなってしまうのか、どうにか防ぐことは出来ないか、今も水族館の挑戦が続いています…。
マンボウのリアル③「ジャンプするのは本当」
マンボウの噂の一つに「寄生虫を殺すためジャンプして死ぬ」というものがありました。
マンボウが勢いよく海面からジャンプするのは本当です!これは野生でも水族館でも確認されており、一説には体についた寄生虫を振り落とすためだと言われてます。
しかし、マンボウがジャンプした衝撃で死んでしまう、というのは嘘です。そのような事実が確認されたことはなく、ジャンプしたあとも何食わぬ顔で泳いでいます。
マンボウのリアル④「海面に横たわるけど理由は不明」
マンボウの噂の一つに「水面で日にあたっていると鳥につつかれて死ぬ」というものがありました。
これも全てが嘘なわけではなく、実際に海面で横たわっているマンボウが目撃されています。
ただし、はっきりとした理由は分かっておらず、以下のようなことが原因ではないかと予想されています。
- 深い海に潜って冷えた体を暖めている
- 海鳥に寄生虫を取ってもらっている
- 日光に当てて殺菌(寄生虫の駆除)している
バイオロギングという手法で研究されたデータによると、このうち「深い海から戻ってきた際に体を温めている」が可能性としては高いとされています。
マンボウのリアル⑤「エビやカニ・深海性のイカも食べる」
最初の都市伝説の中には「食べたエビやカニの殻が内蔵に刺さって死ぬ」や「食べた魚の骨が喉に詰まって死ぬ」のように食べ物系の死因もありました。
確かにマンボウはエビやカニを食べますし、深海性のイカやイワシも食べます。そのほかにもクラゲなや浮遊性の貝類も胃の中から見つかっています。(ただし飼育下のマンボウはあまりクラゲを好んで食べないようです)
水族館などの飼育下では消化不良を起こし、餌が原因で死亡することもあります…。飼育環境が影響している可能性もありますが、あながちこの死因は間違いじゃないかもしれませんね。
マンボウのリアル⑥「水深800mまで潜る」
先ほど、マンボウは泳ぎが下手だという話をしましたが、彼らは小回りが効かないだけで、広い大海原では意外と優雅に泳いでいます。そして、結構深いところまで頻繁に潜ることで知られています
水深200m以下、いわゆる「深海」に行くことはそこまで珍しいことではなく、水深800mという非常に深い場所まで潜ったことも確認されています。
ただ、個体によって差が大きくその詳しい理由はまだ不明ですが、餌を食べるためというのが通説です。マンボウについてはまだまだ分かっていないことが多いので、これからの研究に期待しましょう。
マンボウのリアル⑦「結構食べられている?」
最後は少し違った違った視点からマンボウをみていきます。
マンボウは歴とした魚なので、もちろん食用利用もされてきました。主にアジア地域での消費が多く、台湾や日本が市場としては最大級です。
体が大きい、つまり食べられる部分も多いですが、すぐに生臭くなってしまうため、基本的には地産地消されます。
最近はネットスーパーなどで買えることもありますが、美味しいマンボウを食べたい人は岩手・宮城・三重などの沿岸域で新鮮なマンボウをゲットした方がいいと思います。
肝心の味はどうなのかというと、好き嫌いが分かれます…笑
水分が比較的多く淡白な味ですが、「美味しい」という人もいれば「マズイ」という人もいて評価が難しいので、やはり百聞は一見に如かず、気になる人は食べてみてください!
マンボウに会える水族館は?
都市伝説はウソ、ということでマンボウのリアルを話してきましたが、他の魚と比べてマンボウ自身がデリケートな魚であるのは事実。水族館側も試行錯誤を繰り返していますが、他の魚よりは体調を崩しやすいと言えます。
つまり、水族館でマンボウに会えることは、実は非常に珍しいことなんです。
日本でもマンボウに出会える水族館はそこまで多くはありません。
ほぼ常設でマンボウに出会えるのはこの3つです。他の水族館でも飼育されることがありますが、常設では無いことがほとんどです。もし確実に会いたい場合は、事前に公式サイトHPなどで確認することをオススメします。
ぜひマンボウに会いに行ってみてください。
まとめ:マンボウ最弱説は少し本当
最初に紹介したマンボウの死因をもう一度見てみましょう。
- まっすぐしか泳げず、岩にぶつかって死ぬ
- 皮膚が弱すぎて触ると痕が付き、それが原因で死ぬ
- 潜ったら水が冷たすぎて死ぬ
- 朝日が強すぎて死ぬ
- 水面で日にあたっていたら鳥につつかれ死ぬ
- 寝ていたら陸に打ち上げられて死ぬ
- 寄生虫を殺すためにジャンプして着地の際に死ぬ
- 食べた魚の骨が喉に詰まって死ぬ
- 食べたエビやカニの殻が内蔵に刺さって死ぬ
- 水中の泡が目に入ったストレスで死ぬ
- 海水の塩分が肌に染みたショックで死ぬ
- 前のウミガメとぶつかる予感がしたストレスで死ぬ
- 近くに居た仲間が死亡したショックで死ぬ
- さらにそのショックで死ぬ
話が大きくなりすぎて、いくつかの事実からこのような嘘が出てきてしまったのだと思います。
でも、説明した通りマンボウは結局デリケートな生き物です。弱い面もたくさんある生き物です。水族館で見れたら感謝してじっくり観察してみましょう!
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