今や日本の食卓には欠かせない魚となっている「サケ」ですが、彼らは川で産まれた後、大きな海に旅立って成長し、再び川に戻ってきます。
この知識を持っている人は多いと思いますが、同じ魚が海と川を行き来することは、言葉で言うほど簡単なことではありません。
それは海が塩分を含む「海水」で成っている一方で、川や湖は塩分を含まない「淡水」から成っているためです。海水魚を淡水に入れると死んでしまいますし、その逆も同様です。
ではなぜ、サケは海でも川でも生きていくことが出来るのでしょうか?今回はこの疑問に答えていきます!
そもそもサケは淡水魚?海水魚?
本題に入る前に、そもそもサケは淡水魚なのか?海水魚なのか?どっちなのでしょうか?
結論から言うと「サケは淡水魚」とされています。淡水魚と海水魚の定義や線引きははっきりとしておらず、川と海を行き来する魚は分類が難しいのですが、サケは卵の数や比重から、生存を淡水域に依存していると考えられています。
どういうことかというと、サケは淡水で産卵を行いますが、この卵の比重だと海水では浮遊してしまいます。浮遊していると外敵に襲われる可能性が高いため、サケの産卵数約3,000個では、子孫繁栄が出来ないということです。
このように、生存・繁殖を淡水に依存しているということで、淡水魚と分類されることが多いです。
サケが海でも川でも生きられる理由は?
サケは「淡水魚」に属していることが分かりました。では、淡水魚であるサケは、なぜ川と海の両方で生活することが出来るのでしょうか?
これは「サケが淡水にも海水にも対応できる浸透圧調整機能を持っているから」です。濃度の異なる2種類の液体を隣り合わせにすると、お互いに同じ濃度になろうとします。この同じ濃度になろうとする力のことを「浸透圧」と言います。
ここでいう2種類の液体というのは、「体液と淡水」もしくは「体液と海水」のことです。塩分濃度は「淡水<体液<海水」なので、この調節機能は淡水と海水で逆方向の調節になります。
サケはこのどちらの浸透圧調整も行うことが出来るので、海でも川でも生きていくことが出来ます。
淡水魚の浸透圧調整機能とは?
淡水で生活する場合、塩分の濃度は「淡水<体液」となるため、浸透圧の影響で体内に水分が入ってきます。これをそのままにしておくと、水分過多によって死んでしまいます。
そのため、淡水魚は体内に入ってきた水分を排出すると同時に、エラから塩分を吸収して調節する機能を持っています。この調節機能によって、淡水魚は淡水中で生活することが出来ています。
海水魚の浸透圧調整機能とは?
一方、海水で生活する場合の塩分濃度は「体液<海水」となるので、浸透圧の影響で体内から水分が放出されてしまいます。これをそのままにすると、脱水状態になってしまいます。
そのため、海水魚は海水を大量に取り入れると同時に、エラから塩分を体外に排出する機能を持っています。この調節機能によって、海水魚は塩分の多い海水中で生活することが出来ています。
このように、淡水と海水で別の浸透圧調整機能が必要となるため、多くの魚は海水と淡水のどちらかでしか生活することが出来ません。
しかし、サケは淡水魚であるにもかかわらず、海水魚が持つ塩分排出機能も持っているので、海で生活することも出来ます。
なぜサケは海と川を行き来する?
サケが川と海の両方で生活できる理由を解説してきました。ですが、そもそもなぜサケは海と川を行き来する必要があるのでしょうか?
下記の通り、「川から海」と「海から川」でそれぞれ異なる理由があるとされています。
- 川→海:産卵に必要なエネルギーを蓄えるため
- 海→川:安全な場所で産卵するため
まず川から海に移動する理由は「産卵に必要なエネルギーを蓄えるため」です。産卵には大きなエネルギーが必要になりますが、サケは寒い時期に川の上流で孵化するので、産まれた場所は食べ物が少なく成長に必要な栄養が不足しています。そのため、食べ物が豊富な海に出て栄養を蓄えます。
また、海から川に移動する理由は「安全な場所で産卵し、生存確率を上げるため」です。海はサケを捕食する大型の生物が多く、天候による影響も大きくなります。また、サケの卵は比重的に海水中を浮遊してしまうため、敵に見つかる確率も高いです。そのため、サケは海から安全な川の上流まで移動します。
種の繁殖のために、複雑な生存戦略をとっているということです!
サケは川に戻ってきたら産卵して死ぬ?
サケは産卵するために川に戻ってきますが、産卵を終えるとその多くが死んでしまいます。
これは、産卵によって蓄えたエネルギーを使い果たしてしまうからです。サケは川を上り始めた段階から何も食べなくなり、海で蓄えたエネルギーを頼りに泳ぎ続けます。
そのため、産卵場所まで到着したサケの体は既にボロボロの状態です。そんな状態で子孫を残すために産卵を行うので、サケは産卵直後に死に至ってしまう、というわけです。これは卵を産むメスだけではなく、放精するオスも同じです。
その後、死んだサケは死骸となることでプランクトンに分解され、川の栄養素となって自分たちの子孫成長の手助けとなります。
サケ好きにオススメの水族館
日本には多種多様な水族館が存在しており、その中にはサケをメインに扱ったものも多く存在します。中でもオススメの施設を紹介します。
- サケのふるさと 千歳水族館(北海道)
- 豊平川さけ科学館(北海道)
- 標津サーモン科学館(北海道)
- イヨボヤ会館(新潟)
どこもサケ好きにはたまらない施設となっているので、サケについて勉強したい人もサケを食べたい人・観たい人など、サケに興味がある人にオススメです!
サケが遡上してくるということで北海道の施設が多いですが、ぜひ行ってみてください。
まとめ
今回は「サケが海や川のどちらも生活できる理由」を紹介してきました!今回の内容をまとめるとこんな感じです。
- 一般に魚は海水か淡水のどちらかでしか生きられない
- サケは「淡水魚」だが、海水魚としての調節機能も持っている
- 淡水魚は余分な水分を排出しながら、塩分を吸収して調節する
- 海水魚は海水を吸収する一方、塩分を体外に排出して調節する
- サケは生存確率を上げるため、川と海を行き来する
- サケの多くは川に戻ってきて産卵した後、死んでしまう