【深海生物の特技】カウンターイルミネーション・カウンターシェーディングとは?

深海魚として有名な「チョウチンアンコウ」のように、深海には光る生き物がたくさんいることは多くの方がご存知かと思います。

しかし、その光る理由は様々で「獲物を誘き寄せる」ものもいれば、「仲間とコミュニケーションをとる」ものもいます。

今回はその中でも「光で身を隠す」という部分に焦点を当てて、「カウンターイルミネーション・カウンターシェディング」について紹介します。

目次

深海魚が光る理由とは?

深海魚には自らが発光するもの・共生しているプランクトンが発行するものなど、光る種類が非常にたくさんいます。ハダカイワシやテンガンムネエソ・ミツマタヤリウオなど、有名な深海魚にも光るものが多いです。

しかし、暗くて冷たい深海で、わざわざ深海魚が光る理由は何なのでしょうか?その理由は下記の通りです。

深海魚が光る理由
  • 餌をおびき寄せる
  • 光で身を隠す
  • 敵の目をくらませる
  • 仲間とコミュニケーションをとる
  • 周囲を照らす

「チョウチンアンコウ」は餌を誘き寄せるための発光ですが、「ホタルイカ」は目眩しのため。「ヒカリキンメダイ」は仲間とのコミュニケーションのために発光しています。

詳しく知りたい方は下記の記事を読んでみてください!

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カウンターイルミネーションとは?

深海魚が光る理由は多々ありますが、今回はその中でも「光で身を隠す」という部分に焦点を当てていきます。

「光で身を隠す」とはどういうことなのか、これは上から降り注ぐ太陽光と同化するために、腹部を同じ明るさで発光させることを意味します。発光させるのは影になる部分なので、主に腹部となります。

こうすることで、下方にいる捕食者に覗き込まれても、太陽光と同化して見つかりにくくなります。こういった仕組みのことを「カウンターイルミネーション(Counter Illumination)」と言います。

暗い深海で発光してしまうと、敵に見つかりやすくなりそうですが、逆に敵を欺くために活用する生き物もいるということです。素晴らしい生存戦略ですね!

カウンターイルミネーションの意味が無くなる水深がある?

実は、カウンターイルミネーションの効果が発揮される水深には限りがあります。それは、深海に届く光の量と関係があります。

一般的に深海とは水深 200m以深の場所のことを言いますが、これは植物が光合成できるギリギリの水深と言われています。そのため、200mを超えるとほとんど光は届かなくなっていきます。光が一切届かなくなるのは水深1,000mあたりと言われており、ここを超えると発光生物以外は完全に闇の世界が広がります。

この情報から、カウンターイルミネーションに限界があることがわかる人もいるのではないでしょうか?

太陽光が届くのは水深1,000mあたりまでなので、それ以上深くなるとカウンターイルミネーションを行う必要性は無くなります。むしろ発光により敵に見つかりやすくなってしまいます。

そのため、カウンターイルミネーションを行う深海生物は、基本的に水深200〜1,000mの範囲に生息しています。

カウンターシェーディングとは?

カウンターイルミネーションと近いものに、「カウンターシェーディング(Counter Shading)」と呼ばれるものがあります。

カウンターシェーディングとは「動物の体表のうち日陰になる部分は明るい色に、光の当たる部分は暗い色になっている現象」のことで、海の生き物では比較的浅い海に住んでいる「サンマ」や「サバ」などにも見られる偽装方法です。

スーパーなどで見てもらえばわかりますが、彼らは背中側が青黒く、お腹側は白くなっています。

背中側が青黒ければ海の色と同化し、海鳥などから襲われにくくなりますし、お腹側が白いと降り注ぐ太陽光の中でも、下方にいる捕食者から見えにくくなります。

この偽装方法は魚のみに限らず、地球上の多くの生物に見られるもので、シカやリスなどにもあります。

「カウンターイルミネーション」は「カウンターシェーディング」に生物発光を組み合わせたものなので、生存戦略としてはより高度なものと言えるかもしれません。

まとめ:深海生物の生き方は多種多様

今回は深海生物の生物発光の中でも、「光で身を隠す」という点に焦点を当てて、カウンターイルミネーションについて解説してきました。

深海生物にはこれ以外にも様々な面白い生態や姿形をしたものがたくさんいます。もっと詳しく知りたいという人はぜひこちらで紹介している本を読んでみてください!好奇心が掻き立てられること間違いなしです。

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この記事を書いた人

水族館や深海魚・水産に関わることなどが大好きです。
大学院で深海魚に関する研究をしていましたが、2020年に社会人になり
働きながらブログをちょこちょこと書いています。

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