深海にある熱水噴出孔・化学合成生態系とは?詳しく解説します

今回は「熱水噴出孔と化学合成生態系」について詳しく解説していきます。

深海を知る上で切り離せないのがこの2つのテーマですが、「言葉は聞いたことあるけど、よく分からない」という方も多いと思います。

しっかり一つずつ解説していくので、最後まで読んでいただければ嬉しいです!

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深海にある「熱水噴出孔」とは?

まずは「熱水噴出孔」について説明していきます。

熱水噴出孔とは「地球の火山活動によって温められた、熱水が噴出している割れ目」のことです。火山活動が原因で発生するものなので、火山活動が活発な場所でよく見られます。

噴き出している水の温度は約400℃にも達しますが、深海は高圧であるため水は沸騰しません。これほど高い温度ですが、深海の水(約2℃)に中和されてるため周辺の温度はそこまで高くありません。

しかも、熱水噴出孔の周辺には活発な生態系が見られます。この生態系を「化学合成生態系」と言います。

深海にある「化学合成生態系」とは?

「化学合成生態系」とは一体何なんでしょうか?

簡単に言うと「化学合成によるエネルギーを利用して生活している生態系」のことです。

化学合成生態系を作り出す熱水噴出孔からは、メタンガスや硫化水素といった化学物質が発生しています。

熱水噴出孔の周辺に住む細菌は、これらを酸化する時に発生するエネルギーを利用して、有機物を作り出します。

そして「化学合成生態系」に住む生物は、この有機物を食べて生活しています。一体どんな生物が住んでいるのか、今回は有名な3種類を紹介します!

化学合成生態系に住む生物
  • ゴエモンコシオリエビ
  • ユノハナガニ
  • チューブワーム など

ゴエモンコシオリエビ

和名:ゴエモンコシオリエビ
分類:節足動物門十脚目コシオリエビ科
大きさ:約 5 cm
生息水深:700〜1,600 m

まず紹介するのは「ゴエモンコシオリエビ」です。

名前は釜茹でにされた石川五右衛門に由来しており、エビとつきますがヤドカリの仲間です。

熱水噴出孔の周辺に多数の個体が密集しており、その多さに研究者も驚くほどです。

熱水に含まれる硫化水素などを利用して育つ細菌を食べながら生きています。

ユノハナガニ

和名:ユノハナガニ
分類:節足動物門十脚目ユノハナガニ科
大きさ:約 10 cm
生息水深:420〜1380 m

続いて紹介するのは「ユノハナガニ」です。

熱水噴出孔の周辺で暮らしている、真っ白い体をした深海ガニです。

匂いに敏感なカニで、魚肉をカゴに入れて近くに設置すると我先にとカゴの中に集まります。

ユノハナガニは高圧でない場所でも生きることができるので、飼育は比較的簡単です。水族館でも観られます。(新江ノ島水族館など)

ガラパゴスハオリムシ

和名:ガラパゴスハオリムシ
分類:環形動物門ケヤリムシ目シボグリヌム科
大きさ:約 3 m
生息水深: 2,000〜2,670 m

最後に紹介するのは「ガラパゴスハオリムシ」です。

英語でジャイアントチューブワームと呼ばれるチューブワームの一種です。

ガラパゴスハオリムシの大きな特徴は真っ赤なエラです。ヘモグロビンによる赤みがとても目立っています。

体内に住む微生物が有機物を作り出し、この有機物だけを食べて彼らは生きています。消化管は退化しており存在しません。

人間も「化学合成生態系」なの?

私たち人間を含めた、地球上の多くの動物は「化学合成生態系」ではありません。

私たちは「光合成生態系」という生態系の中に生きています。

太陽の光エネルギーを利用して植物が育ち、植物を他の動物が食べて、人間がその動物を食べる。このように太陽のエネルギーが元になった生態系のことを「光合成生態系」と言います。

もちろん一般的な魚たちも光合成生態系で、化学合成生態系の生物はかなりレアと言えます。

「化学合成生態系」が存在する意義とは?

このように「私たちの生活とは全く違う方法で生活している生態系が深海に存在する」ことは、どのような意味を持つのでしょうか?

熱水噴出孔が存在する場所は人間にとっては極限状態とも言えます。

「そんな場所に生物がたくさん住んでいる」これは宇宙に生き物が存在することにも繋がります。

もちろん確定ではないですが、人が住めないような星にも生物が存在している可能性は高まります。

今後、極限状態の星に住んでいる生物が発見されることを楽しみに待ちましょう!

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この記事を書いた人

水族館や深海魚・水産に関わることなどが大好きです。
大学院で深海魚に関する研究をしていましたが、2020年に社会人になり
働きながらブログをちょこちょこと書いています。

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