今回は深海魚と地震の関係についてお話しします!
珍しい深海魚が発見されるとよく見かけるのが「地震が起こる前兆だ」というフレーズです。
しかし、このお決まりのフレーズはもう時代遅れです。なぜなら「深海魚と地震は無関係だ」ということが研究によって明らかになってるからです。
東海大海洋研究所などの研究によると…
今回紹介するのは、2019年に発表された研究の結果です。
東海大海洋研究所と静岡県立大のグループが、深海魚が捕獲されたり打ち上げられたりした場所と、近くが震源地となった地震の発生状況を調べました。
調査の対象となった深海魚は以下の8種類です。
- リュウグウノツカイ
- サケガシラ
- テンガイハタ
- タナベシャチブリ
- シャチブリ
- アカマンボウ
- ユキフリソデウオ
- テングノタチ
どれも、古くから地震との関係性が噂されていた深海魚達です!
調査した期間は1928年11月〜2011年3月で、その間に336件の捕獲・打ち上げ事例がありました。
また、地震に関しては「気象庁一元化震源データ」という、全国の地震情報がまとめられたデータを用いています。
最終的に、深海魚の捕獲・打ち上げから30日以内に、発見場所から半径100キロ以内が震源となったマグニチュード6以上の大きな地震がいくつあるかを調べました。
しかし、この条件に当てはまった地震はなんと一つだけ!2007年7月に起こった新潟・中越沖地震のみでした。
ということで、「深海魚と地震は無関係」ということが明らかになったのでした。
なぜ深海魚と地震が関連づけられたのか?
では、深海魚と地震には関連性が無いにも関わらず、なぜこのような迷信が世に広まったのでしょうか?
こういった現象は心理学用語で「錯誤相関」と呼ばれます。「錯誤相関」は、実際には無関係な出来事に関連性を感じ取ってしまうことを言います。
また、今回のように珍しい出来事で錯誤相関した場合、話題になるのでニュースやSNSであっという間に広まってしまいます。一方で何にも起きなかった場合は、特に話題にもならず触れられることはありません。
こういった流れで、今回のように「深海魚の出現が地震の前兆である」という迷信が広まってしまうんです。
とはいえ、そうやって人間は物理法則や物事の因果関係を明らかにしてきたので、珍しい出来事を何かの前兆と考えるのは人間として自然なことでもあります。
未だに深海魚と地震の関係を信じる人が多い?
深海魚と地震には関連性が無いと分かった現在でも、これらの関連性を信じている人は結構いるようです。
2020年2月15日、福井県越前町の漁港で2匹のリュウグウノツカイが発見されました。
この時の映像が公開された時、ネット上では大きな地震の前触れを懸念する声が上がりました。
ここからも分かる通り、人間の「錯誤相関」の影響はかなり強いようですね…。
ただ、ネタとしても面白いので、信じている人に空気を読まず「深海魚と地震に関連は無いよ」と伝えるのも野暮なものかもしれません…笑
深海魚はまだまだ不思議がいっぱい
今回は「リュウグウノツカイとその仲間たち」というテーマで深海魚を紹介してきました。
ですが、世の中にはまだまだ様々な深海魚がいます。
他のテーマについてもまとめているのでこちらからどうぞ。
もっと深海魚について知りたい方は、本を読むのもオススメです。
● 参考論文
Yoshiaki O., Masashi K., Yoichi N., Toshiyasu N.: Is Japanese Folklore Concerning Deep‐Sea Fish Appearance a Real Precursor of Earthquakes?, Bulletin of the Seismological Society of America, 109 (4), 1556–1562 (2019).
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